前回は、漢方薬局の先生からいただいたお仕事について触れました。今回は、いよいよ香港への旅立ちに向けた準備についてお話しします。
混乱の中での準備、そして心の葛藤
漢方薬局の先生から仕事をいただいたものの、頭の中は「ビザは必要?」「必要な持ち物は?」「ホテルは?」「チェックインできる荷物の重さは?」と完全にパニック状態でした。
20歳の私にとって、香港での買い付けは未知の領域で、何が必要なのか全くわからず不安が募ります。
しかも、当時はまだインターネットが普及していなかったので、簡単に情報を得られる時代ではありませんでした。今のようにスマホひとつで調べ物ができる時代がどれだけ便利か、痛感するばかりです。
一人旅の必読書『地球の歩き方』
そんな時、専門学校時代の友人から「『地球の歩き方』って本がいいよ」と教えてもらいました。海外一人旅をする人の必読書です。早速書店に足を運び、香港版を購入。
ページをめくるたびに、香港の風景や文化が目に浮かびました。初めての海外旅行を控えた私にとって、この本はまさに宝の地図のような存在でした。
この本のおかげで、香港がビザなしで1週間(現在は90日)滞在可能なことを知り、安心しました。
漢方薬の買い付け自体は半日で終わると思ったのですが、せっかくの機会だからと安いホテルに泊まって費用を節約し、1週間滞在することに決定。
香港の街並みや文化、そして何よりも憧れの百万ドルの夜景を目にするチャンスを逃すわけにはいきません。
安いホテル探し、そしてドキドキの国際電話
ホテルの予約も取らずに旅立つのはあまりにもリスクが高いと思い、宿泊先の手配はしておくことに決定。『地球の歩き方』の後ろには、香港の安いホテルの一覧があり、そこから良さそうな所を選択して予約することにしました。当時、香港の物価が安いと聞いていたものの、ホテル代は予想以上に高くて驚きました。
シャワーとエアコン付きの部屋は、安くても1泊5千円でした。当時の香港の物価では、かなり高く感じました。でも、6月の香港は日本の真夏並みに暑く、湿気もすごいという情報を得て、エアコン付きの部屋は必須だと判断しました。
今のようにインターネットが普及していなかったので、国際電話を直接ホテルにかけて予約するしかありません。電話口で「ドゥ・ユー・ハヴ・ア・プラスティック?」と言われた瞬間、突然の質問に戸惑い、冷や汗をかきました。
「うん? プラスティックを持っているか? 何を言っているのだろう?」と頭が混乱しました。しかし、実はそれは「クレジットカードを持っていますか?」という意味だったのです。
プラスティックがクレジットカードを指すことに驚き、確かにその通りだと納得。慣れない土地では、クレジットカードがとても頼りになると実感しました。
旅立ちの準備と心の葛藤
出発の1週間ぐらい前から緊張が高まり、手が微かに震えました。初めての海外一人旅となると、不安が頭をもたげてくるのは当然です。
でも、心のどこかで、「この旅はきっと自分にとって大きな学びになる」という確信があり、着々と準備を進めました。
百万ドルの夜景を飛行機の窓から見ることを夢見て、確実に窓側の席を確保するために出発の4時間前には成田空港に到着できるように家を出ることに決定。
帰りは生薬をたくさん詰めるため、荷物は極力少なくすることにしました。大型のスーツケースにカバンを2つだけ詰めました。着替えは香港で安いTシャツでも買って、それを自分へのお土産にすることにして、持っていきませんでした。
持ち物はパスポート、現金、クレジットカード、購入リスト、ウォークマン、お気に入りの曲が入ったカセットテープ、地球の歩き方、そしてペンと手帳だけ。
必要最低限の荷物だけを準備し、いよいよ旅立ちの日が迫り、すべての準備が整いました。
次回はいよいよ成田空港での出発。果たして無事に飛行機に乗れるのでしょうか?
思いもよらないトラブルに見舞われた旅の始まり、続きもどうぞお楽しみに!
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