初めての海外一人旅(香港)〈Part 1〉 ― 20歳の私が踏み出した一歩

こんにちは!『新宿御苑 英語個別学院』代表の鈴木です。今日は、私が20歳の時、まだインターネットやSNSが普及しておらず、旅行情報はガイドブックや旅行代理店で得るのが一般的だった時代に、初めて一人で海外に飛び出した冒険についてお話ししたいと思います。
当時は、今ほど気軽に海外旅行をする人が多くなく、一人旅などはまさに「冒険」という言葉がぴったりな時代でした。

海外への憧れ

大学一年生の春、海外への憧れが高まり続ける中でのことでした。大学に行く前に通った英語の専門学校では、友人が次々と海外留学へと旅立つ姿を目の当たりにし、その羨望が私の心を揺さぶっていました。

でも、私の財布の中にはたった8,000円しかなく、このわずかな額では海外旅行など夢のまた夢。そんな現実に直面していた私は、「なんとかして海外に行ける方法はないものか」と必死に考えました。

そこで浮かんだのが、幼い頃から私を見守ってくれていた漢方薬局の先生の存在です。先生は本格的に中医学を学ばれた漢方薬のエキスパートで、いつも周囲の人を助けているような方です。私にとっては、まるで本当の父親のような存在です。

その先生が香港や台湾から生薬を仕入れる姿を見て育った私は、「先生にお願いすれば、きっと香港での買い付けの仕事をもらえるはずだ!」と思い立ちました。

給料なんていらない。ただ、飛行機代とホテル代、そして買い付けの費用さえ出してもらえれば、それだけで十分だったのです。先生にとっても悪い話だとは思えませんでした。

思わぬ壁

私は意を決して先生にお願いしました。「飛行機代とホテル代、そして買い付けの費用を出してください。香港での買い付けの仕事を私にさせてください!」と。

ところが、先生は困ったように眉をひそめ、「仕事をあげるのはいいけど、お前の身に何かあったらどうするんだ? オレはお前の親に何て言えばいいんだ?」と、断られてしまいました。仕事をもらえると思い込んでいた私は、先生の言葉に打ちのめされました。

しかし、ここで諦めるわけにはいきませんでした。専門学校時代のクラスメートのひとりが旅行代理店に勤めていたことを思い出し、すぐに連絡を取りました。そして、成田―香港間の格安チケットを手に入れられることがわかりました。

その金額はなんと5万5千円(当時の格安チケットの相場は7万8千円)! これならいける! そう思った私は再び先生の元へ飛んでいきました。

「先生! 成田―香港間のチケットが5万5千円で手に入ります!」と少し興奮しながら伝えると、先生は驚いた様子で「へぇ~、安いね」と言いましたが、その次の言葉に、思わず言葉を失いました。

「で、それがどうしたの?」・・・またもや撃沈。私は一瞬、自分の熱意が全て無駄になったように感じ、全身の力が一気に抜けました。

最後の賭け

それでも、諦めることができず、最後の一手に出ることを決めました。思い切って勝手にパスポートを申請し、交付されたその日に再び先生のもとへ向かいました。

「先生! パスポートがおりました!」と叫ぶように伝えると、先生はため息をつきながら一言、「勝手にしろ」と、まるで私の熱意に根負けしたかのように答えました。ただ、その声には、厳しさの中にも、先生の優しさと私への期待が感じられました。

その瞬間、私は飛び上がるほどの喜びを抑えきれませんでした。「ありがとうございます! 勝手にさせていただきます!」と心の中でガッツポーズをしました。

先生からは「買い付けのリストは作る、購入する問屋の場所は教える、そして必要なお金は渡す。あとは一切責任を取らない」と念を押されましたが、私にとっては願ってもないチャンスでした。

こうして、夢に描いていた初めての海外一人旅が、ついに現実のものとなったのです。胸が高鳴る一方で、心の奥底にわずかな不安を抱えていました。それでも、私は自分を信じて勇気を振り絞り、一歩を踏み出しました。

 

 

次回は、旅の準備編で、安いホテル探しとドキドキの国際電話、心の葛藤などをお伝えする予定です。

どうぞお楽しみに!

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