ただただ呆然!
この日は、前日に香港島にある問屋さんで買い付けた漢方薬を受け取ることで今回の仕事を完了して、仕事が終わった解放感で香港の街にくり出す予定でした。
午前中には荷物を持って来てもらうことになっていたので、午後からどこに行こうかと『地球の歩き方』を読みながらワクワクしていました。
ほどなくして、問屋さんが到着しました。ところが、予想外にもふたりのスタッフが大型のミカン箱ほどのダンボールを運んできました。
たちまち、10個以上のダンボールが天井に達するほど積み上がりました。中には一人で運ぶには大変な重さのものもあり、トータルで100kgはゆうに超えていました。
ふたりは広東語で話しており、英語は全く通じません。「これで全部だ」と言っているようでしたが、その量に私は呆然自失。こんなに多くの荷物を日本に持ち帰るのはとても不可能だと、途方に暮れました。
前日に問屋さんが「ホテルまで運ぶ」と言ってくれたのは親切心からだったのだと、この時初めて理解しました。
100kg超えの試練
何から手を付けたらいいか全く分からない状況でしばらく呆然としていましたが、まずはダンボールを開けてみることにしました。
すると、中に黒い錠剤が入った直径5cm、高さ10cmほどの小さな瓶が大量に入っているダンボールがありました。キャップを開けると、中はコルクで栓がされ、ロウ付けもされています。
漢方薬局の先生が「瓶に入っているものは中身だけが必要で、瓶は要らない」と言っていたのを思い出し、瓶から中身の錠剤だけを取り出してビニール袋に入れ替えることにしました。
ホテルのフロントでナイフとフォークを借り、近くの薬局でビニール袋と湿気対策の乾燥剤を購入。何時間もかかって、一つ一つ瓶の蓋を開け、ロウ付けされたコルクをフォークとナイフでこじ開け、乾燥剤を入れたビニール袋に詰めていきました。
途中、指の痛みが増すたびに、気持ちを奮い立たせて作業を続けました。とにかく何とかしないと日本に帰れないと思ったからです。
荷物を受け取った後、香港観光を楽しむつもりだった自分が愚かだったと自己嫌悪に陥りました。目の前の荷物の山を見て、ただのピンチどころではなく、絶望的な状況でした。
最初は「先生も加減してくれれば良いのに! 限度っていうものがあるよな!」と愚痴をこぼしていましたが、先生がリストを作っている時、横で「先生、いくらでも買ってきますからじゃんじゃん書いてください」と煽ったのは自分だったことを思い出しました。
その時は仕事がもらえた嬉しさから調子に乗ってしまったんだと深く後悔しました。もちろん、後悔しても、この荷物が魔法のように消えるわけではありません。
途中、ホテルのスタッフが「何をしているの?」と物珍しそうに部屋に来た時には、「お金を払うのでアルバイトで手伝って」と頼もうかと思いましたが、失礼になると思いとどまりました。
ルームクリーニングのスタッフが来たときには、ダンボールが散乱する部屋を見て「どうやって掃除したらいいの?」と言われ、「今日は掃除しなくて大丈夫です」と帰ってもらいました。
続く困難と展望
香港一人旅の4日目以降、100kg以上の荷物との格闘が続きます。果たして無事に日本に持ち帰ることができるのでしょうか?
次回もお楽しみに!
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